エピローグ(7)の続きです。
日本との比較対照の切り口は結構沢山ありました。思いつくままに列挙してみました。
戦国時代に日本にやってきた宣教師の著作を読んだ事があります。本の名前は覚えていません。「我々は・・・するが、日本人は・・・する」といった比較対照的な記載方法が印象に残っています。
一例を挙げると「我々は手で食事する。日本人は箸を使う・・・」
この記載には正直驚かされました。16世紀の西ヨーロッパは手で食事をしていました。イタリアのメディチ家からフランス王に嫁いだカトリーヌ・ド・メディシスがナイフ・フォークの習慣をフランスにインポートしたと言われています。
・地形や地質
日本は、急峻な山がち地形で河口の低平地に人口や資産は集中している。低平地は沖積平野で地盤の強度が小さい。そのため地震の影響を受けやすく液状化が度々発生する。都市部の地盤は、低いので河川に高い堤防を築いて洪水を防いでいる。
イギリスは、国土の大半が緩やかな丘陵地で、そのため人口や資産が分散している。洪積世よりも古い地質が大半で強度があり安定している。そのため地震の影響を受けにくい。もっとも地震自体がほとんどない。都市部の地盤は河川より高いため堤防がない。
・気候(気温と雨)
日本は、年間降雨量が大体1700mmで季節変動が大きい。夏の最高気温は高い。湿気も多い。
イギリスは、年平均で600mm程度で季節変動が少なく一定している。メキシコ暖流のお陰で高緯度にあっても比較的温暖だ。日本に比べると夏は冷涼、冬の差異はない。

要するに、夏の気温は日本より8~9度も低い。夏の軽井沢みたいなものだ。そのため雑草が成長しにくいのかもしれない。イギリスの庭の芝や植え込みが綺麗なのは、ガーデニング好きの国民性に加えて、雑草が育ちにくい気温も関係しているのかもしれない。それは、この冷涼な気温によるのではないかと推測する。
・河川
日本は、河床勾配が大きい急流河川、水は青く澄んでいる。
イギリスは、河床勾配が小さくゆったり流れている。水は茶色で濁っている。
・都市の分布
日本は、河口の沖積平野に都市が集中している。
イギリスは、丘陵地形なので都市は全土に分散している。
・歴史
日本は、600年頃から中央集権体制が確立して、以来、独立国を維持してきた。他国の支配を受けたのは1945年から6年くらいである。第2次大戦で敗北したものの努力を重ねGNP第2位の位置を長年維持してきたが、2年前にGNP第3位に転落した。近年は高齢化や人口減少が進行し、かっての活力が失われてきた。
イギリスは、紀元前1世紀にローマに占領されていた事がある。11世紀後半に中央集権体制が確立した。以来、独立国を維持してきたもののフランスとの長い確執が続いてきた。18世紀半ばから19世紀前半、産業革命を成功させて世界第1位の大国になった。第1次大戦後、アメリカに首位の座を奪われた。アメリカの参戦を得て、第2次大戦に勝利して常任理事国の地位にある。
・宗教・文化
日本は、600年頃から中央集権体制の確立と同時に仏教を導入した。多神教の神道とセットで神仏混交が続いてきた。現在の日本人はほとんど無宗教であり、キリスト教の風習などにも馴染んでいる。
イギリスは、11世紀後半に中央主権体制の確立とともにキリスト教国になったようだ。16世紀に国教会を独自に立ち上げた。彼らの生活にキリスト教は深く入り込んでいるだろう。
・土地、建物についての価値観
日本は、土地に対する執着が強い。戸建ての住宅取得が人生のゴールである。建物の価値は年々下がる。土地本位制の民族ともいえるかもしれない。住居は木製なので耐用年数が50年くらいと短い。火事で焼けたり、台風や津波で流される事もある。造っては壊され、壊されては造り替えてきた。日本社会はフロー社会と言われるが、その根本にはこのような歴史があるためかもしれない。
イギリスは、土地ではなく建物に執着するようだ。200年前の石造りの建物に住む人もいる。石づくりは耐用年数が500年以上はあるだろう。建物の価値が年々上がる。補修で持たせるストック社会になったようだ。庭にも拘る。
・建物、住居
日本は、都市計画法、建築基準法、河川法、道路法などでまちづくりや建物を規制している。個人の権利を尊重するため公益的な目的で土地を取得するのが困難な場合がある。
イギリスは、個人の権利を制限する「Town and Country Planning Act」法があり、ちょっとした改修でも周囲の同意まで必要としている。多くの街の建物のスカイラインが綺麗に揃っていて、電柱・電線はない。
・土地利用
日本は、都市計画法で用途区域を縛ってはいるものの土地利用がモザイク状になっていて美しさに欠ける場所が多い。
イギリスは、「Town and Country Planning Act」法で都市部のみならず田園部にも縛りを掛けていて、都市計画のゾーニングもしっかりしているようだ。何処に行っても美しいのはこの法律のせいかもしれない。
・食文化
日本は、和食だけでなく洋式、エスニックなんでも食べる。食に関しては貪欲だ。
イギリスは、味の薄いF&Cなど伝統食への拘りは残っているようだが、この20年くらいで食事情は随分変わったのではないかと感じる。和食ブーム(ラーメン、寿司)や野菜を沢山取り込んだヘルシーな食事が増えて、この国の健康志向を感じた。
・インフラ
A 道路
日本は、高速道路がほぼ全国に展開され、環状道路のようなネットワーク化に移行中である。
イギリスは、高速道路と都市周辺部のバイパスがすでに完成している。高速、地方道とも走りやすく、景観も素晴らしい。地方都市はパーク&ライドを導入し、車の流入を抑制している。ロンドンのような大都市では、車の流入を抑制するためにロードプライシング制度を導入しているようだ。
B 鉄道
日本は、鉄道駅はプラットホーム毎に屋根を付ける。
イギリスは、すべてのプラットホームを覆う一つの屋根を付ける。

C 運河
日本は、運河や観光舟運に関しては低調である。都市部の運河は高度成長期に汚染が進み、匂いやゴミのせいで埋め立てられ、道路や公園になった。最近、大阪や東京で水都復活の機運が生まれてきた。
イギリスは、運河利用が盛んである。産業革命後期に鉄道や道路にその役割を奪われたが、開削した数千kmの運河を観光舟運に活用していた。
・観光
日本は、車主体の観光開発やまちづくりになっている。
イギリスは、郊外に駐車場を造り、中心地は人主体の観光開発やまちづくりをしている。
・環境保全
日本は、尾瀬や上高地のように車の流入を厳しく規制している観光スポットは少ない。少し前に環境庁を省に格上げして環境保全への取り組みを強化している。
イギリスは、駐車場で車を停めてフットパスを歩かないとビューポイントに行けないようにしている。そのため環境がしっかり保全されている。環境保全への取り組み姿勢は日本よりはるかに強いように感じた。
・産業(農業、工業、商業など)
何か書きたいけど書くほどのネタがありません・・・
以下、次号・・・
最後に感想を書いてイギリスⅡ編を締めたいと思います。